リゾートバイト(リゾバ)の接客の花形のひとつであるフロント。
「はたらくどっとこむ(アプリリゾート)」から関西のホテルで2ヶ月半の間、フロントスタッフとして仕事に従事していた。接客の経験に乏しくフロント未経験のため、当初はどうなることかと思ったものだ。それでも僕はここにいる。
今回は、僕を例としてホテルのフロントの仕事を紹介したい。仕事に迷うあなたの助けになれば幸いだ。
フロントの仕事内容とは…?
僕が業務に就く前に想像していたフロントの仕事はこうだ。
- 「椅子にずっと座ってパソコンをいじる」
- 「ホテルのフロントはお客様からの電話を受け取る」
- 「顧客情報を管理したり部屋割りを決めたりする」
- 「チェックイン・チェックアウト時に精算したり説明したりする」
まぁ大枠は間違っていないが、実は想像以上に体力を消耗する仕事だ。
デスクワークとは程遠く、むしろお客さんに対して足を使って献身的な接客を施すという認識に近い。それに、部屋割りを担当するのはホテルの経験が長い正社員なので、出番が回ってくることはない。
求められるのは、チェックアウト・チェックイン時の接客、そして付随する雑務だ。
朝のチェックアウト業務。比較的平穏である。
チェックアウトで任されるのは、精算のサポート、お客さんとの思い出作りだ。
①精算のため列への誘導
お客さんを精算の列に誘導しなければならない。列に並ばせることで順番を前後することなくチェックアウトすることが可能だからだ。
もしも、順番を間違えてしまえば、ホテルへのクレームに繋がる。不満はじゃらんや楽天トラベルなどのクチコミ・レビューに掲載され点数が落ち、売上が低下する。そして支配人が全社会議で責任を追及され、部下を叱り、さらに部下を叱り…そして僕が叱られる。実際、僕の上司は優先する順番を間違えると激おこぷんぷん丸となっていた。
いいか、順番通りにお客さんを誘導しろ。
②駐車場でのお見送り
お客さんを駐車場までお見送りしなければならない。ホテルでの最後の経験が強く印象に残るからだ。
とにかく最後は重要だ。「ピーク・エンドの法則」によれば、記憶に基づく評価は、ピーク時と終了時の苦痛の平均で決まる。ドナルド・レデルマイヤーとダニエル・カーネマンが1990年代前半に行った大腸内視鏡検査の実験では、患者Aの方が検査に対し悪い印象を持った。患者Bの方が苦痛を味わう面積が大きいのにも関わらずだ。
これは、患者Aの方が検査の最後で苦痛が大きかったからだ。つまり、最後の印象はとても重要なのだ…!
という訳で、駐車場までお客さんをお見送りしよう。重い荷物を車まで運び、屈託のない笑顔で出発を見送るだけでも、良い思い出となり得るのだから。
③お客さんの写真の撮影
お客さんの写真の要望に応えなければならない。旅の思い出に花を添えるのも僕の仕事だからだ。
勤務していたホテルの外観や内装は豪華で、駐車場やロビーで写真を撮りたがるお客さんは多い。そこで「良ければお写真お撮りしますよ」と一言を添えれば、全体写真を撮ることができる。一人だけ欠けた写真では物足りないのだ。
よし、優しいカメラマンになろう。
過酷なチェックイン業務。脳みそフル回転で息つく暇もない。
さぁ、それではチェックイン業務に参ろう。
こちらはチェックアウトよりもフル回転が求められる。駐車場から部屋への案内まで、一連の業務を代わる代わる補完しながら流動的に動くのが我がホテルのやり方だ。
業務はざっくり4つに分けられる。
①駐車場への案内
さぁ、車が来るぞー。ホテルの玄関口でぶらぶら待機し、お客さんの車をお出迎えしよう。到着したら名前を聞いて、インカムでフロントに名前を伝えるのだ。名前が変わっていても、「ぷぷぷぷ…」と笑ってはいけない。真剣な表情で誠意を伝えよう。
ちなみに、僕の勤務先は駐車場の白い仕切り線がなぜかなかったので、場所を詳細に伝えて誘導する必要があった。ガソリンスタンドの店員のごとく「オーライ!オーライ!」までがワンセットなのだ。
最後に「ご駐車ありがとうございます」と添えてフロントまで案内しろ。
②お客さんをフロントまで誘導
駐車を終えたら、車の荷物をフロントまで運んであげよう。
勤務先のホテルには、荷物を載せて運ぶことができる「台車」が用意されており、とても楽に運ぶことができた。外国人のバカでかいキャリーケースにも対応可能だ。
傷つけないよう優しく取り扱おう。
③チェックインの手続き
さぁ、ここに来てやっとチェックインの手続きだ。
「レジカード」という紙に名前や住所、電話番号などの個人情報を記入してもらい、予約情報と照らし合わせる。とても重要な工程だ。問題がなければ宿泊施設の説明に移る。
- 男性様の大浴場はお2階、女性様は1階をご利用いただけます。
- 本日のお食事は19:00からということでよろしいでしょうか。
- 明日のチェックアウトは10:00ということでご案内させていただきます。
説明は基本的にテンプレ。予約情報を見ながら、変更点・確認事項を言えば良い。
ただ、中には初見の例外的なサービスがあり、対応に苦慮することはあった。だから、あらかじめ「今日の予定を聞いておく」とか「その場で上司に確認する」などの工夫は必要になる。
まー困ったら堂々としておけ。
④部屋への案内
最後は部屋への案内だ。
お客さんの荷物を台車で押しつつ、館内設備の場所や利用時間、注意事項などを伝えていく。内容はどのお客さんでもほぼ同じなので、③以上のテンプレが待っている。上司の目からも逃れられる。そのため、実は④が一番楽だ。
だから、余裕があれば、「今日は良いお天気ですね!どこか寄られました?」とか「お子さんとても可愛いですね…!」と言ってみても面白い。チップ(お心づけ)は部屋でもらうことが多いため、いかに良い印象を与えられるかが勝負だ。
【危機一髪】フロントで働いていた時の4つのトラブルとは…?
ホテルのフロントの仕事は順風満帆だった訳じゃない。むしろ、常にトラブルと隣り合わせだ。この章ではあなたに僕が遭遇したトラブルをお伝えしたい。いいか、僕と同じトラブルをするな。
①お客さんを間違った部屋に案内する
「あんた、どエラいことやってへん?」
ホテルの食堂で彼女と夕食を食べていた時に飛び込んできたのは、フロントのベテラン女性の一言だった。そう、お客さんを間違った部屋に案内してしまったのだ。原因は名前の確認を怠ったことにある。
- お客さんが車で到着後、インカムでフロントに名前と部屋番号が伝わる
- 鍵とホテルの案内状を用意する
- お客さんを席に座らせ、レジカードに名前を記入してもらう
- レジカードの名前と予約時の名前に間違いがないか確認し、ホテルの説明に入る
- 部屋まで案内する
④で名前を確認すれば防げたミスだ。①でコミュニケーションの齟齬があっても食い止めることができる。クソックソッ!
不幸中の幸いだったのは、閑散期で空き部屋があった点、そして間違った部屋に入る予定のお客さんが未到着だった点だ。直属の上司の神采配により、何事もなく部屋を変更してもらいことなきを得た。ただただ平謝りだったのは言うまでもない。
いいか、名前の確認は怠るな。
②配属して3日ほどでフロントの直属の上司にキレられる
仕事で叱られることは?当然だ。フロントの仕事も例外ではない?当然だ。僕は配属3日後に直属の上司にキレられた。お客さんのチェックインの順位がわからなくなってしまったからだ。
事の顛末はこうだ。当時は駐車場で絶賛配車中だったが、車が立て続けに3台、さらにバスが1台来たことで僕のキャパシティを超えてしまったのだ。取り急ぎ対応するも、お客さんがフロント周辺ですでにうろうろしている状態だ。そして上司が吠える「優先順を覚えとけよ!!」。
いや、それはわかっているのだ。無理なものは無理だ。だが、「無理強いしてんじゃねーよハゲ」とは全く思うことなく、「ハイッ!ハイッ!」と小気味の良い返事で何とか切り抜けることができた。
堂々としていれば何とかなるものだ。
③把握してないことを聞かれる
ホテルの業務や設備、従業員、営業時間、置いてある商品の種類、建築費、周辺の建物…全てを把握することは可能か?答えはNOだ。研修を受けていないのならなおさらである。しかし、それでも質問に答えるのがフロントの従業員だ。
- 女性風呂に化粧水は置いてあるのかしら…?
- 卓球ラケット貸し出しの料金は…?え、それって時間制なの…?それとも定額制…?
- あーらすごいわねぇ。ここのモザイクタイルは、どこかの国をモチーフにしているのかしら…?
知らねぇ…。
それでもアウアウせずに、「一旦確認いたしますね」とか「そのはずですね。僕が確認した時はその形となっておりました」とか「ヨーロッパの国々をモチーフにしております」などと言えば何とかなるものだ。
とにかく堂々としろ。
④クソみたいな英語で対応する
日本語を喋れない外国人が来たら、稚拙な英語でも対応せざるを得ない。同僚や上司が英語を苦手としているならなおさらだ。
お客さんのほとんどは日本人だが、1%程度は香港や中国からの渡航者だ。大抵は日本語を喋ることができない。そこで誰かが対応するハメになるが、英語で対応できるのは同僚の台湾人2人とベテラン1人、そして僕。シフトの関係で彼らがいないこともあり、チープな英語で何とかやっていくしかない。
Ah…I appreciate to stay this hotel. Please see it. You can use spa for men, start to PM 2:00 and end to AM 0:00.
とかそんな感じ。文法的に多分間違っているんだろうなと思っても、アイコンタクトとジェスチャーで伝えられれば良い。
堂々としてれば良いんだよ!(半ギレ)
実は楽しい「ホテルのフロント」。4つの理由
それでもホテルのフロントは楽しい。いや、本当に楽しい。その理由を4つ紹介させていただこう。
①ランダムな事件を解決する快感
毎度思わぬところから事件がやってくる。
パターン化された業務ほど面白くないものはない。常に新しい刺激が欲しいならなおさらだ。ホテルのフロントはどこから事件がやってくるかわからない。たとえば、
- 50代のおばちゃん軍団に、「私未婚なのよ」と結婚を迫られる
- チェックインの名前の記入は無理!と理不尽なことでクレームを付けられる
- お客さんから冷やかしに近い質問攻めを受ける
これを乗り切る快感…!
特に③で懇切丁寧な対応を心がけた結果、お客さんからのアンケート「良かった従業員」欄に僕の名前が。しかも勤務最終日で最初で最後の1回だったので本当に嬉しい!
②運動でリフレッシュ
運動不足を解消できる。
社会人からデスクワークを続けてきた僕には、とても清々しい経験だ。机に張り付いたまま仕事をするのがいかに不健康かを身をもって体感できたのだ。
エコノミー症候群よ、さようなら。
③ザ・ストレス発散
実はストレス発散になる。
僕はどちらかというと一人が好きなタイプだ。読書やカフェでパソコンをいじるなど、独りの世界に浸るのが日常なのだ。しかし、孤独の先には「お願いだから喋らせてくれ」という気持ちが沸き起こる。
これは接客で解決できる。お客さんとの世間話に華を咲かせればいいのだから。
④優しい同僚のお姐さん
同僚のお姐さんは頼りがいがあり優しかった。
接客経験豊富な彼らは、仕事の指示を出し、ミスをカバーし、時には愚痴を聞いてくれた。また、遠慮なく質問でき仕事のしやすい環境づくりに努めていたのだ。
あなたも良き同僚と出会えることを祈っている。
【結論】刺激が欲しい?ならばフロントで。
予期せぬトラブル、楽しい接客こそフロントの仕事の真髄だ。刺激の欲しい人にはたまらない仕事になるだろう。
僕は「はたらくどっとこむ(アプリリゾート)」の「フロント・ベル」で勤務先を見つけることができた。あなたにも最高の職場が見つかることを祈っている。
はたらくどっとこむ(アプリリゾート)
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