2072年4月7日の日記

ステーションで日記を書いている。やばい、ワクワクが止まらない。2週間前まで忙しなく働いていたのが嘘のようだ。飛び立った時の解放感、現実のバカバカしさを僕は一生忘れることができないだろう。

往復のチケットを10万円で手に入れることができたのは幸運だったかもしれない。連休が重なる時期は高騰するが、あいにく僕は無職の身だ。火曜日、朝8時の一番安い便で向かうことにしたのだ。マジでケニアのLCC最高である(無愛想さが気になるが、まぁ価格相応さ)。

独りで旅をするのは今回が初だ。10年ほど前に出かけた家族旅行が最後。旅とは無縁の生活を送ってきたとも言えるかもしれない。僕は周りの人に言われるがままに人生を生きてきた。ただ、疲れてしまったんだ。一度きりの人生、他人にとやかく言われようと自分の人生を生きたいと思った(インターネットばかり見てるジジイとは話が合わない)。

貯金は100万円。物価は若干高いそうだが、多分何とかなるやろ。往復便取ってるし、現地に大使館もあるし…。人脈はないが、何かを変えたい気がする。実は今回の旅は、現地での仕事探しも兼ねている。国内でも情報は得られるが、何事も自分の目で見なければ本当のことはわからないからだ。

だから、埼玉草加宇宙空港から飛び立った時のあの感覚は未だに残っている。宇宙エレベーターを予約した時から、席は窓際と決めていたのだ。地表を離れ、成層圏を超えて地平が段々丸くなっていく。なんだか全てがバカバカしくなった。たかだか15分に過ぎなかったものの、本物の幻想がそこにはあったんだ。

とにかく今は成層圏を離れてステーションにいる。ステーション全体が回転しているおかげで重力は地球と何一つ変わらない。先ほどマクドナルドを食べて、乗り継ぎ便を待っているところだ。

「火星の歩き方」には軽く目を通しておいたが、細かい予定は未定である。そもそもイミグレーションとか通れるんだろうか。ま、何とかなるだろう。

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元公務員。「ゆるく生きたい…!」「夢がありそう…!」と希望を持って地方から上京したものの、東京の荒波に晒され地獄感を味わう。過労とストレスで体を壊すぐらいなら冷蔵庫を壊そう。