※今回の記事は、公務員という存在をかなり一般化しています。
ブログのネタにでもなるかなと思い、書籍を購入してみた。
その名も「リアル公務員」。市役所に勤務する著者の町田氏が、公務員の日常をリアルに描き出している。
町田智弥 英治出版 2010-12-25
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本の中にも書いてあるのだが、
公務員を取り巻く世界の「おかしさ」「哀しさ」「ややこしさ」
をマンガを使用することでわかりやすく表現している。公務員のことがよくわからない人でも内部事情のイメージが描きやすいと思うし、現職の公務員であれば思わず頷いてしまうことも多いのではないか。「んー何とかならないのかな」という公務員が抱えるもどかしさがカジュアルに書いてあって、スイスイ読めてしまう。
その半面、公務員の抱える問題点も客観的に分析していて、頭の良い人だなと思ったり。
公務員の誤解
本を読んでいて感じたのは、公務員は市民に誤解されているのではないかということだ。「公務員は甘い」だとか「ぬるま湯」だとか言うのが世間一般の見方のように思う。ただ、内部にいた人間としてはそれはちょっと違うなと思っていて、仕事自体はタフさを求められることが多いように思っている。失敗しない為のプロセスを執拗に求められるからだ。
たとえば、公務員の世界では外部向けの文章に対して執拗なチェックを受けることになるし、根拠を幾度も確認されることが多いように思う。確かに、公務員という機関を代表する文章にもなりうる訳だから、それだけ厳しいチェックにさらされることは仕方のないことだ。
紙ベースの仕事
しかし、それが行き過ぎのように見えることもある。たとえば、内部向けの文章。これは、市民など外部に対して出す文章ではなく、公務員内部で使用する文章のことだ。こういうのがたまに回覧で回って来たりする訳だが、この回覧内の文章にやけにこだわることが多い。このプロセスは非常に無駄が多いように思う。確かに中身の精査は重要だが、内部文章に関しては一文字一文字に対して神経を使いすぎな気がするのだ。
しかも未だに紙ベースである。紙ベースである理由としては「徹底した秘密主義」が挙げられることが多いが、紙ベースだからといって情報を守ることができるとは限らない。たとえば、こちらの調査によると、情報漏洩の4分の3は紙媒体であるそうだ。もちろん、大半の企業で紙が主力の媒体であるという事実はあるのかもしれないが、紙は電子媒体よりも安全であると考えるのはなんとも思考停止な話だろう。また、情報の即効性という意味でも電子媒体の方に歩があるように思う。
にもかかわらず、未だに紙ベースである理由は何故か。
未だに紙ベースである理由
理由は様々にあると思うのだが、個人的に考えられる理由を2つほど挙げてみたい。
①印鑑重視の階級社会
1つには、公務員が印鑑を重視していることが挙げられるだろう。この印鑑文化にもあまり意味が無いと感じているのだが、公務員は印鑑が大好きだ。印鑑を押す位置や順番などが暗黙知で決められていたりする(法令上記名押印が必要である場合も多々ある)。これは非常に権威主義的な側面もあるようで、町田氏によると印鑑は
複雑な階級社会を押す位置一つで「見える化」してくれる
とのことだ。公務員の世界は雇用の流動性が低く、前時代的な階級社会の様相を呈しているのだが、階級を明確にするツールとして印鑑は便利であるということだ。
これは紙ベースでなければ実現できない。電子媒体に判を押すことはできないからだ。したがって、押印という動作を考えた場合には紙が適切なのだ。
②身近にエンジニアがいない
もう1つは、身近にエンジニアがいないことが挙げられる。セキュリティに詳しいエンジニアが周囲にいないために、電子媒体を取り扱うこと自体に不安があるのだ。
ぶっちゃけ、大半の公務員のITリテラシーは低いように思う。もちろん、中にはITリテラシーも高い者もいるとは思うのだが、基本的にはITを得体の知れない何かと捉える向きが多い。未だにIEが全盛であることを考えると、やや残念な気持ちになる。まぁ僕自身もエンジニアではないので、人のことは言えないのだが。
ちなみに最近、日本年金機構で個人情報流出事件があったが、メールが当分の間禁止になったようだ。
おわりに
以上が紙ベースとなっている理由だ。もちろん一口に公務員と言っても、組織内部の規律や法令に左右される部分はあるので省庁・役所によって内情に差異はあると思う。
しかし、公務員の実情としては一般的にこのようなイメージを持っておいてもよいであろう。
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