そう、我々はあきる野市の秋川渓谷を目指していた。淡々と自宅の近所で過ごす日々に飽き飽きとしていたからだ。
提案されたのが秋川渓谷の石舟橋だったという訳だ。小一時間前の心躍るテンションがもはや懐かしい。
せっかく観光に来たというのにこのテンション。都心から電車で1時間30分の距離は、確実に我々を蝕む。いかん、いかんぞー!日曜日の夜に妙な疲労感は残す訳にはいかない。
目的地の終点「武蔵五日市駅」に到着だ。
武蔵五日駅の改札。着いて早々面食らったのは、秋川渓谷はごく一部の観光スポットという訳ではなく、駅周辺の幅広いエリアを指し示しているということだ。他に鍾乳洞などの観光名所があるようで、朝から車で巡るぐらいがちょうど良さそうだ。
エキナカコンビニ「NewDays」の店員に今回の目的地である石舟橋までの距離を聞いたところ、歩いて向かうのはとても時間がかかるそうだ(約6km)。しかし、次のバスが来るまで時間があるため、観光がてらひとまず徒歩で目的地まで向かうことにした。
この開放感に溢れる光景を見ていただきたい!あのおぼろげな雲、鬱々とした天気、生命力に溢れた山々、植物の新鮮な匂い…実に愛おしい。
そしてこの笑顔を見ていただきたい。行きの電車内で浮かない顔をしていたのが嘘のようだ。自然は人間を笑顔にする。
時期が良かったのか小規模ではあるがお祭りも開催されていた。小気味いい太鼓の音が心地よい。舞い上がっていた我々はそのままお祭りへの参加を考えたが、あまりにもシャイであるため2度ほど目の前を通り過ぎて先を急ぐことにした。
「千と千尋の神隠し」に出てきそうなお食事処。連れのTさんの「いいねージブリっぽいねー」との言葉通り、随所に宮崎駿らしさを感じさせる。
コケだらけの外壁に沿って道を進む。都心は緑に乏しく無造作なコケですら愛しい。
道中、趣のある木材屋を見つけることができた。Skyrim(スカイリム)の木こりのおじさんが出てきたとしても私は驚かなかっただろう。
途中、バスが後ろから迫っていることに気づき我々は絶望感に苛まれた。次のバス停が視認できないからだ。しかし、立ち止まっている時間はない。すぐにあるかどうかすらわからないバス停を目指し全速力で歩道を駆けると、バスはスピードを落とし我々の元に停止した。どうやら乗せてくれるらしい。
とバスの運転手。意外と地元の方にとっては馴染みのない橋なのかもしれない。3分ほどバスに乗せてもらい、再度徒歩で目的地に向かう。
これが石舟橋だ。確かに緑の木々の合間に架けられた赤みがかった橋のコントラストは比較的鮮やかだが、写真で見るよりインパクトは薄い。石舟橋は秋川渓谷の雰囲気を楽しむためのひとつのオブジェクトに過ぎないのだった。
「秋川温泉 瀬音の湯」のポテンシャルを知る
石舟橋を渡り、ややぬかるむ山道を少し先に進んだ先に「秋川温泉 瀬音の湯」がある。温泉はもちろん、カフェや和食どころ、お土産屋などがありお金を落とすには申し分ない施設だ。
この開放感!!
写真の通り、「秋川温泉 瀬音の湯」には中庭に無料の休憩スペースがあり、誰でも外の空気を楽しむことができる。背もたれの角度が約45の南国調の椅子に座り、セミの声を聞きつつ無心になる至福の時間だ。
今回は「秋川温泉 瀬音の湯」に入らなかったが、足湯に浸かることにした。全身に付着した18分の1の汗を流すことができて非常に満足だ。
鮎づくしの夕食!食え!食うんだ!
気付けば18時30分。腹が減ったので「和食だいにんぐ川霧」のカウンター席で夕食を食べることにした(目を合わせることが苦手なので、個人的にカウンター席はとても都合が良い)。野菜天丼やマグロのとろろ丼、ステーキ膳、刺身定食などのメニューがある中、我々は以下のメニューを頼んだ。
- 鮎煮浸し、とろろ膳
- 鮎の塩焼き
まさに鮎づくし。秋川が近くにあるため「川魚が確実に美味い」と考えたためだ。普段口にしにくいご当地食材を食べることに旅の醍醐味はある。
950円の鮎煮浸し、とろろ膳。質素で優しい味が楽しめる。成長期の男性には物足りない量かもしれない。
生姜のはじかみ、ヤマモモが付いた650円の鮎の塩焼き。程よい塩加減で、ビールのおつまみとして大活躍すること間違いなし。
鮎の塩焼きを頭からワイルドに食す。
十里木のバス停に亡霊現る。
武蔵五日駅でもらった小冊子は意外とハイテクだ。「COCOAR2」というアプリをダウンロードし、小冊子をカメラでかざすことで、AR(拡張現実)を楽しむことができる。小冊子のページ上に「秋川橋河川公園バーベキューランド」という文字が書かれた川が見えるだろうか?画像ではわかりにくいが、ページ上で延々と動画が流れ続ける。
あきる野市やるな!ハイテクだ!
夕方からだと時間が足りない!
低調なテンションで始まったのだが、どこかお洒落で緑豊かな秋川渓谷に気分が高揚してしまった。想像以上の発見ができるから旅は楽しい。瀬音の湯や鍾乳洞などの観光スポットを見ることなく終わってしまったので、次回は朝からじっくり回ってみたい。