特段アナウンスはしていなかったのだが、昨年12月から都市発見WEBアプリケーション「Trander(トランダー)」を開発している。技術的にはバックエンドはLaravelのAPIが担い、フロントエンドは主にVue.jsが担っている。前回作成したRESORN(リゾーン)のWordPressから脱し、本格的なSPA開発に進んでいこうという流れである。
今回、SNS認証を含めたログインやメイン機能である都市名の提案が動く部分までは実装しているから、ソーシャルマディア等公共の場に晒して反応を伺うというのはひとつの手かもしれない。しかし、今はスタートの印象が大事であると考えている。まずは、ユーザーの潜在的なニーズに合致する機能を実装することに集中したい。問題はTranderが今どの段階にいるかわからないことだ。
そこで先週、クラウドワークスを使ってインタビューを実施した。興味深い気付きが得られたので内容を共有したい。大きく以下の3つのメリットがあると感じた。
- 課題を炙り出すことができる
- 第三者との認識のズレを修正できる
- 優先すべき次のアクションが明確になる
目的(なぜやるか)
実装者の視点だけでは見えないものを炙り出すため。オンラインでユーザビリティテストの類を実施して、利用者の本音を探りたい。
ユーザービリティテストとは
Aさん(特定のユーザー)が、ジャケットを探している状況(特定の利用状況)で、自分の好みに合うアイテムを購入する(指定された目標の達成)ためにECサイトを使うとします。
その際に、不快感なくスムーズに商品購入ができる(有効性・効率性があり、かつ満足できる)かどうか、がユーザビリティの判断基準になるのです。 – 【初心者編】ユーザビリティテストとは?基礎知識やメリット、準備するものまでやさしく解説! | NIJIBOX BLOG
募集内容と予算
今回は以下の内容で仕事を公開した。WEBの編集者として記事のライティング依頼や簡単なアンケートを依頼した経験はあるものの、対面でのインタビュー依頼は初である。
- 30分あたり1,000円で2名募集
- Google Meet上で顔合わせ、インタビュー(ただし受ける側は顔出しの必要はなし)
- 実機(スマートフォン)を使ってTranderに触れてもらい、リアルタイムに感想を声に出してもらう
- 最後にいくつかの質問に答えてもらう
募集結果
果たしてこの怪しい依頼を受けてくれる人などいるのだろうか、と半信半疑な気持ちで公開したところ3名の方にご応募いただいた(今回は2名の募集のため1名の方は断らせていただいた)。やってみるものである。それぞれ男性・女性で、水曜日の夜と土曜日の昼にインタビューを実施することになった。
水曜日のインタビュー結果(男性)
- 地図が表示されずメインの機能を使うことができなかった
- 最低1、最高5のうち継続して使う可能性は1, 2程度(ほぼ使わない可能性が高い)
- 外出時は何か目的があって使うので、何のために使うかわからない
- 都市という名称に違和感(東京を思い浮かべる)
- 若い人を狙うなら商業施設とか買い物できる場所とか具体的なものが必要では
- 引っ越ししたばかりの人とか周辺地域を知らない人には良いかも
土曜日のインタビュー結果(女性)
- 最低1、最高5のうち継続して使う可能性は2程度
- 知らない土地が出てきても行こうと思わない
- 知っている土地が出てきたら興味が出る←これはとても重要
- 動作はスムーズ
- セッティングの部分の右側が動かない…?
インタビューで得た気付き
想定外の意見が返ってくることは予期していたものの、実際に回答をもらうと面白い。
■興味が出るのは「知っている土地が出る」から
知っている土地が出てきたら興味が出るという意見は、狙っている効果とは真逆なのである。Tranderは意外な発見を起こすことを目的としていて、現在地から近くの都市名をランダムに返すことで、知らない・縁のなかった地域に行く手助けができると考えている。アプリケーションの使用で趣旨が伝わらなかったということは、設計がまずいという証だ。
■都市という単語について
また、都市という単語が東京などの大都市を想起させるという意見は盲点だった。世界各国で使用できることを謳っておくなら、限界地域も地方も巨大都市も全て網羅できる言い方に変えた方が良い。異なる地域の方にインタビューできなければ、そもそも気付くことはなかっただろう。
■機能が抽象的過ぎる
都市名ではなく、具体的な商業施設を掲載するべきでは?という意見も挙がった。確かにただ都市名が返ってくるだけでは、「So what?」だから何状態である。実は一度、中核の機能に何のAPIを使用するか、を検討したことがある。
【外部APIまとめ】4つの地点取得系APIの特徴と限界を知る – Qiita
さすが天下のGoogleである。Google Places APIを使えば、登録された施設情報を手に入れることができる。情報の具体性から言えば明らかにGoogle Places APIを使用するべきなのだが、Tranderが地域探索に重きを置いている点、1,000回のリクエストで$20の費用がかかる点(高価過ぎる!)を考慮して採用を見送った経緯がある。
いや、確かに実装方法によっては面白いAPIだと思うのだ。ボタンを押したら、★が2程度の残念なラーメン屋や腕の良い整骨院がランダムに出てきたらバカバカしく思えるだろう?だから今は実装せず、有料会員向けのコンテンツとして将来的に出すことをひとつのプランとしている。
問題は無料会員の範囲でニーズと機能をどうマッチングさせるか、今どのようなアクションを取るか、である。この点も考えがあるので、粛々と実装を進めたい。
■ターゲットが曖昧である
Tranderはターゲットを特に決めずにプロジェクトを進めてきた。というよりわからなかった。自分にとっては有用だが、他の誰にとって価値があるか見えなかったのだ。インタビューで気づいたのは、そもそも目的を持たずに見ず知らずの土地に行く強いニーズがないこと。買い物や友達とご飯を食べに行くから外に出るということだ。
この経緯を考えれば、バックパッカーとかチャリダー(って言うんすかね)にターゲットを絞るのはひとつの手かもしれない。一方で、彼らの母数が比較的少ないことを考えると、絞り過ぎている気もしている。まだ考えはまとまっていない。
■次に何をすれば良いかが見えるようになる
インタビューを通して、次のアクションが明確になったという効果を感じている。実装を通して振り返ると、テストコード・バリデーションの書き漏れ、リファクタリング(設計の見直し)などの課題が脳内のワーキングメモリを圧迫するのだが、フィードバックを得ることで優先度が可視化された。これはとても良いことだと思う。
インタビューで見えた3つのメリット
少しまとめよう。今回のような走り出したばかりのプロジェクトに対し、第三者からフィードバックを得ることは大きく以下の3つのメリットがありそうだ。
- 課題を炙り出すことができる
- 第三者との認識のズレを修正できる
- 優先すべき次のアクションが明確になる
クラウドソーシングを使えば比較的費用を抑え、手早く簡単にできるので、興味のある方はぜひぜひやってみて欲しい。あなたのポジティブな話をお待ちしている!
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